ウレタンとは?身近に使われるウレタン素材

ウレタンとは、プラスチックの一種で、「ウレタン結合」と呼ばれる化学反応によって生成される樹脂の一種です。ウレタンゴム、ウレタン樹脂などとも呼ばれます。
この「ウレタン結合」という化学反応が起こって生成されるものが「ウレタン」と呼ばれ、化学的には「カルボニル基を介してアミノ基とアルコール基が反応」したもので「ポリオール成分」と「ポリイソシアネート成分」により生成されますが、工業的には原材料〇〇と原材料▲▲を足したものがウレタンである、といったような一意の定義はありません。様々な配合や方法によって生成される様々な性質のウレタンがあり、スポンジから塗料、断熱材や接着剤など、世の中の様々なシーンで利用されています

ここでは、代表的なウレタンの種類と利用されているシーンをピックアップしてご紹介します。

ウレタンは大きく分けると2種類+その他

1.ウレタンフォーム

ウレタンフォームの代表例:軟質ウレタンフォーム(スラブ成型)。いわゆるスポンジです。

ウレタンフォームの代表例:軟質ウレタンフォーム(スラブ成型)。いわゆるスポンジです。

ウレタンフォームとは、フォーム(FOAM=泡の意味)状のウレタンのことです。ウレタンは生成時にガスを発生して発泡し、小さな気泡がどんどんと増え、膨らんでいきながら形作られていきます。ウレタンフォームは、生成する際の材料の配合などの方法で

・柔らかく、クッション性と復元性に富んだ軟質フォーム(軟質ポリウレタンフォーム)
・硬く、断熱性に富んだ硬質フォーム(硬質ポリウレタンフォーム)

に分けられます。
また、成型する際の方法には

・発泡したウレタンを後から切り出すスラブ成型(スラブウレタン)
鋳型の中で形通りに膨らませるモールド成型(モールドウレタン)
吹き付けて発泡しながら固着させるスプレー発泡

などの方法があります。

ウレタンの特性として生成方法や配合材によって密度(弾力・硬さ)を自由に設計することができるため、利用目的に合わせた密度にすることで、様々なシーンに合った密度のウレタンを利用することができます。

利用されるシーン

軟質ウレタンフォーム

軟質ウレタンフォームは、その柔らかさとクッション性から、日常生活において人が座るための各種クッション類や梱包、衝撃吸収材等に用いられます。
スポンジクリーナーなど、日常で手に触れるものにも軟質ウレタン製のものが数多く利用されています。

軟質ウレタンフォーム例:食器洗い用のスポンジ(スラブ成型)

食器用スポンジ

軟質ウレタンフォーム例:鉄パイプと一体成型した椅子の芯材(モールド成型)

椅子の芯材

分類 用 途 例
車両四輪 自動車・建築機械・鉄道車両等の座席用クッション、カバー生地ラミネート裏打ち材、ドアトリム・センタピラガーニッシュ等緩衝材、シーリング材、床天井等吸音・制振材
二輪 サドル、エアフィルター、オイルフィルター、ヘルメット内張り、ライダークッション
機器 各種吸音材、空調用フィルタ、液密・気密シール材、防音フローリング材
家具 椅子、座イス、ソファー、置きクッション
寝具 マットレス、掛け及び敷き布団、まくら、ベッドパッド
インテリア 座布団、各種クッション、カーペット・マット類裏打ち、コタツ敷・掛け
包装 精密機器用梱包材、食品・果物梱包材、鮮魚トレー敷き
日用雑貨 キッチンクリーナー、ボディーソープ用クリーナー、靴磨クリーナー、洗車用クリーナー、オムツ用サイドギャザ−、靴(表皮材裏打ち、中敷き、インナブーツ)、スリッパ芯、縫いぐるみ等詰め物、化粧用パフ
衣料用 肩・ブラジャー等のパッド、防寒材ライナー
その他 育苗用・園芸用土壌、水耕栽培用資材、水処理用担体、フェンス衝撃吸収壁、運動用着地マット、マネキンボデイー、船舶椅子用クッション、遊具ボール、音響効果室吸音材、車椅子用クッション、保温・断熱材

(引用:日本ウレタン工業協会)

硬質ウレタンフォーム

硬質ウレタンフォームは、軽く・断熱性に優れており、また形状も加工しやすい特性を活かし、船舶・サーフボードなど海での利用、断熱材としての住宅利用などで利用されています。

分類 用 途 例
船舶 漁船、大型船、冷凍貨物船、コンテナーの断熱、LNG船、LPG船、液化ガス船の断熱、FRPボートの芯材、大型船舶、救命艇の浮力材、ブイ、・浮き類の浮力材
車両 冷凍庫・保冷車、鉄道コンテナー、タンクローリーの断熱、車両(新幹線など)、トラック天井断熱
プラント類 化学工業設備タンク・配管の断熱、重油タンク・配管等の保温、LPG、LNG低温液化ガス保冷・配管の断熱、断熱カバー、タンクのふた
断熱機器 冷蔵庫、冷凍庫の断熱、エアコン断熱部材、ショーケース、ストッカー、自動販売機、温水器、貯湯槽等の断熱
建築 住宅、オフィスビルの断熱(壁、床下、天井、屋根下等)、断熱建材(ラミネートボード、複合パネル、サイディング材等)、浴槽(ステンレス・FRP・ほうろう)断熱、冷凍倉庫、冷蔵庫倉庫、農業倉庫、畜舎等の断熱、ボイド充填(断熱サッシ)、恒温室(農作物貯蔵・たばこ乾燥)、地域集中冷暖房断熱
土木 道路床断熱、振動防止材
家具・インテリア・その他 椅子芯材、ドアーパネル、装飾工芸品、娯楽用具(クーラーボックス・水筒)、教材(立体地図など)、型材・治具関係
サーフィンなどの芯材、RIM方式製品(スキー芯材・ラケット芯材・ハウジング類)、梱包材

(引用:日本ウレタン工業協会)

硬質ウレタン例:曲線などデザイン性に富んだ椅子の芯材(モールド成型)

椅子の芯材

硬質ウレタンフォーム例:断熱性に優れる性質を活かした建物の断熱材(スプレー発泡)

建物の壁内断熱材

硬質ウレタンフォーム例:軽く、浮力のある素材はサーフボードにも適します。(スラブ成型後加工)

サーブボード

和泉フォームの得意分野であるモールドウレタン、モールドウレタンチェアについては、モールドウレタンとはのページでより詳しく解説しています。

 

 

2.ウレタンエラストマー

ウレタンエストラマーとは、エラストマー状(elastic:弾力のある+polymer:重合体ポリマーからなる造語、弾力のある構造)のウレタンのことです。
ウレタン生成時に攪拌・加熱などの工程を加えて圧縮、硬化させたり硬化剤を加えたりすると、弾性(元に戻ろうとする力)や強度に優れた状態で固定化します。一般的に「ゴム」と呼ばれるものもエラストマーに含まれます。性質としては機械的強度、低温特性、耐摩擦性、耐候性、耐油性を持ち、様々な形状に加工できます。分類としては、加熱した時の特性に応じて

・熱可塑性エラストマー(熱による変化に対して可逆性がある)
・熱硬化性エラストマー(熱による変化が恒久的なものになる)

といったように分類されます。

利用されるシーン

衝撃吸収性があり、弾力のある保護フィルム(熱可塑性エラストマー)

スマホの保護フィルム

タイヤもウレタン製のものがほとんど(熱硬化性エラストマー)

車やバイクのタイヤ

いわゆるラバーソールも、ウレタン製のものが多くあります。(熱可塑性エラストマー)

靴底(ラバーソール)

 

 

その他のウレタン

ウレタンは、上記2種類以外にも様々な性質・用途に利用されています。ここでは、日常目にする事も多いウレタンの用途を元にその他さまざまなウレタンをご紹介します。

塗料として用いられるウレタン

近年では様々な機能性・自然派塗料が出回り、ウレタン塗料以外の選択肢も数多くありますが、安価で扱いやすいウレタン塗料は日常の様々な面で利用されています。

テーブル等木材の塗料として
ウレタン塗装テーブル

ウレタン塗装テーブル

 

ウレタン塗料で塗装されたテーブル天板はツルツルとした光沢のある高級感が出ます。耐摩耗性が強く、水シミがしにくいウレタン塗装天板は業務用のテーブルを中心にオフィス用、家庭用等でも幅広く利用されています。

テーブルにはウレタン塗装の他、自然な風合いを出すオイル塗装などもよく用いられます。

家屋等建築物の外壁塗料として
ウレタン塗装

ウレタン塗装外壁

 

家屋等の建物の外壁としてもウレタン塗料が用いられています。塗料として用いられるウレタンは密着性が高く柔らかい素材になるため、ヒビ割れを抑える効果が期待でき、コスト的にも安価に利用可能です。

近年では対候性や耐久性の高さからシリコン塗料も幅広く用いられています。

接着剤として用いられるウレタン

ウレタン結合時の特性を利用した接着剤は、耐熱性・対候性に優れ、幅広い素材への接着性を持ちます。弾性・硬度・伸びなどの特性も自由に設計できるため、業務用・家庭用問わずゴム(シリコンゴム等を除く)や木材、金属、タイルなど様々な接着剤に利用されています。

繊維として用いられるウレタン

伸縮性のあるウレタン繊維(ポリウレタン繊維)は、綿などの素材にわずかに混紡するだけでも十分に伸縮する素材になり、水着やスポーツウェア、インナー・アウター問わず様々な服飾素材に用いられています。ただし、ポリウレタンは水分や熱、紫外線に弱い性質で衣服としてのポリウレタン製品の寿命はおよそ2~3年と言われており、中性洗剤を使う・強い力で脱水や洗濯を行わないなど丁寧に扱う必要があります。

 

 

チップウレタン(ウレタン再生品)とは

チップウレタンとは、様々なウレタンの製造工程で出た切れ端などの端材(ウレタンチップ)を接着剤と合成して加熱・再圧縮したものです。

チップウレタン

チップウレタン

 

チップウレタンは、再生品である性質上非常に安価に利用することができ、また強い力で圧縮加工する特性上、ヘタリにくく弾力も強いという性質を持ちます。

クッション性は十分に確保できますが、どうしても角部分は角ばった触感になったり、表面の座り心地も硬すぎてしまうため、ソファやマットなどのクッション材の芯材としてチップウレタンを利用し、周りを薄く柔らかいスラブウレタン(チップウレタンに対し、ピュアウレタンと呼ばれます)でくるむことで角や表面の手触りを滑らかにし、耐久性・弾力性を持たせたクッションを安価に製造することができます。