モールドウレタンとは

様々なデザインのモールドウレタンチェア

様々なデザインのモールドウレタンチェア

モールドウレタンとは、MOLD(=モールド:金型・鋳型の意味)に入れて発泡成型したウレタンフォームの一種です。流し込んだウレタン液が鋳型に合わせて発泡・成型するため、他のウレタンフォームと比較して

・複雑なデザインの製品でも再現性が高い
・設計通りのクッション性を実現できる
・様々な部材との一体成型が可能

といった特徴があります。
製品のモデリングを行った上で鋳型・金型を製作し、ラインで生産するため、鋳型・マスターモデルの完成後は短納期に均質な商品を大量生産することが可能になります。

ウレタンの性質上様々な弾性・硬度の製品を作ることができるため、椅子・ソファ等のクッション材・芯材として利用されるものだけでなく、自動車の衝撃吸収材やハンドル、電車やベンチの手すり部分など、公共性が高い場所、耐久性・安全性が求められる箇所など日常生活の様々な場面に利用されています。

硬度や用途によってさまざまに使い分けられるモールドウレタンの種類についてご紹介します。

 

軟質モールドウレタンとは

発泡したウレタンの気泡が連通していて復元性(クッション性)が高く、柔らかいウレタンフォームのことを「軟質モールドウレタン」と呼びます。

軟質モールドウレタンは、他のクッション材として用いられるウレタンフォームと比較して耐久性、弾力性に優れており、ヘタリ(型崩れ)にくく高品質のクッション材として、比較的高級なマットレスや枕、ソファ、椅子等に用いられています。

どのようなウレタンフォームであっても柔らかさ(発泡率・密度)そのものはウレタン液の配合や加工方法によって調整可能ですが、軟質モールドウレタンが他の軟質ウレタンフォームより優れているポイントは、被膜構造にあります。
モールドウレタンは製造工程において、ウレタン液を金型に注入して加熱することで発泡・充填し、金型ピッタリのウレタンフォームが出来上がりますが、その際、金型との接着面に薄いウレタンの被膜が出来上がります。この「被膜」がウレタンのヘタリを防止する枠として機能することで耐久性が維持できるのです。

薄い皮膜があり、ツルツルしています。

軟質モールドウレタン表面

気泡が直接見えています

軟質スラブウレタン表面

この被膜は他にも、圧力がかかった際(人が体重を預けてどっしりと座った際)に通常であればそのまま中心部分にまっすぐ向かう圧力を、被膜が「引っ張られる」ことで、周囲のウレタンに放射状に分散するという役割を果たします。それにより軟質モールドウレタンは、座った人がやさしく包み込まれるような、快適な弾力を実現することができるのです。

被膜が引っ張られて周りのクッションに圧力を分散

軟質モールドウレタン

体重がかかった方向(真下)にすべての圧力が向かう

軟質スラブウレタン

利用されるシーン

椅子(軟質モールドウレタン)

椅子

寝た時にピッタリフィットする低反発枕

低反発枕

硬質モールドウレタンとは

発泡したウレタンの気泡が独立していて断熱性に優れ、硬いウレタンフォームのことを「硬質モールドウレタン」と呼びます。

硬質モールドウレタンは、独立した気泡の一つ一つに熱伝導率が極めて小さいガスが含まれている、硬い構造体です。そのため、「断熱性に優れる・軽い・衝撃吸収性に優れる」といった特性を持ちます。また、モールド成型により鋳型通りに発泡生成されるため、設計通りのデザインに仕上げることが可能です。

建物などの断熱性として利用される際は主にスプレー発泡による生成が多く、鋳型で成型する硬質モールドウレタンは自動車のドアのすき間や天井パネルなどの衝撃吸収材や椅子・ソファの芯材など、形状が明確に確定している用途に用いられることが比較的多くなります。

他の硬質ウレタンフォームと比較して硬質モールドウレタンの優れている点は、デザインの自由度と、接着性を活かした他の部材との一体成型です。
設計通りの仕様で出来上がるため、自動車の設計上できたドアや天井のすき間にピッタリとはまる衝撃吸収材は、事故や衝突の際にまんべんなく衝撃を分散できるようになります。また、椅子などでは脚などをビス止めする底板部分をあらかじめ金型に設置して発泡成型することで、より耐久性に優れた椅子脚の接続が可能になるのです。

 

利用されるシーン

自動車のドアの衝撃吸収材などに

金属と一体成型

存在感のある構造で軽い椅子

椅子

インテグラルスキンフォーム(スキンドフォーム)

ウレタンを生成する際に、表皮層として用いられる素材を混合して鋳型で成型し、鋳型接着面が表皮のように固く仕上がりつつ、内部のクッション材と一体化したモールドウレタンをINTEGRAL(=インテグラル:完成品の意味)SKIN(=スキン:表皮の意味)と呼びます。(インテグラルスキンフォーム、スキンドフォーム、インテグラルフォーム等呼び方は様々です)

他のモールドウレタンは塗装や革張り、レザー/生地張りなどを行って製品化するのに対して、インテグラルスキンフォームは鋳型から取り出したものがそのまま製品として利用されることになります。外観面がとても滑らかに仕上がり、シボ加工やエンボス加工など鋳型に施したデザインをそのまま美しく仕上げられることが特徴です。

その特徴を活かして、オートバイのバックレストや理容・美容院などの椅子のアームレスト・ヘッドレスト、アミューズメント施設のペダル/ハンドル類などに用いられています。

利用されるシーン

バイクのバックレスト

バイクのバックレスト

電車や自動車の手すり

電車や自動車の手すり